冷凍保存愛
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「いいか、おまえは俺が今から言うことを実行すればいい」
小田原から電話がかかってきたのは小堺がバイトの休憩に入った夕方過ぎのことだった。小田原の声に焦りがあった。
「これから真鶴がおまえのところに行く。何か聞かれるだろうが何も知らないと言え。
おまえは何も知らないんだからそのままでいい。
おまえが知らないと言えば真鶴は店を後にするだろう。
行かせるな」
「……行かせるな? ですか」
「ああ、そうだ。真鶴を俺の家に連れて来い。絶対にな」
「……でも」
「いいな」
「……はい、わかりました」
「よし」
「先生、一つだけいいですか」
「……それは許さないと言ったよな」
「お願いです、一つだけ」
「……」
「真鶴さんをどうするんですか」
「守る」
それだけ言うと電話は切れた。
『守る』
危険が迫っているのかもしれない。たぶんそうだ。彼女がこれから行く先には危険があるんだ。
だから守るために真鶴さんをなんとしても先生の家に連れて行かなければならない。
そう小堺は考え、腕時計に目を落とした。