冷凍保存愛
真夏。
太陽が遠慮なしに照り付けるアスファルトにカゲロウがたつ。
空には雲一つない。
太陽の光を妨げるものは何もなかった。
ひざ丈の真っ白い緩めのワンピースにスニーカー。
麦わら帽子には赤いリボンがくるっと一周巻かれている。
ナチュラルブラウンの髪の毛が柔らかい風にふわりとなびいた。
公園の入り口には大きな噴水があって、暑さしのぎにとばかりに勢いよく水しぶきを上げている。
子供がその中を走り抜け、楽し気な声があちこちから聞こえてくる。
「あっつい。夏だあああ」
塔ノ沢あたみは手で顔を仰ぎ、白い手首に巻かれている腕時計で時間を確認して、にっと笑んだ。
「あたみちゃん、ごめんね! 待ったよね」
噴水を突っ切るように勢いよく走ってくる男子が一人。
デニムに白いTシャツ、髪の毛は短く無造作にセットしている。
細身だけど清潔感があり、やさしい印象を与える男子だ。
子犬を思わせる顔つきに人懐っこい笑顔。
笑ったときに目尻にしわが寄る。
大きく手を振ってあたみに走り寄ってきた。
「代々木君、遅いー」笑いながら手を振る。
「ごめんね、電車混んでて、ほんとごめん」
「だよね、私の乗った電車もけっこう混んでたから」
「暑かったでしょ、待たせてほんとごめん」
拝む代々木に笑顔で、
「うそうそ、大丈夫だよ。ほんとは私も今来たとこなんだ」と目を細めて笑った。
ピンクのリップが太陽の光に反射し、透明に輝いた。