冷凍保存愛
「……だれ?」
その場で恐る恐るその男子に声をかける。
じゃないと自分の席に戻れない。
一瞬の間があり、その男子が振り返った。
「……君、誰?」
っえー。質問に質問返しできた。と思うも、
「そこ、私の席なんだけど。あの、私もしかして席間違えてますか?」
教室の前、黒板の横に貼られている座席表をもう一度確認した。
ああ…と小さく頷いたその男子は、
「そうなんだ。君の席なんだね。ふーん。そう、俺、コーヅ」
「コーヅ? って、ん? 名前? ですか」
「君は」
「わ、私は羽都音。真鶴羽都音です。昨日までインフルエンザだったので、だから今日からなの。で、早めに来て学校の中を調べておこうと思って」
「ああ、それで早めに学校へ来たってことか」
「うん。まあ。そんなとこなんだけど、でもちょっと待って、その制服って……ここのじゃないよね?」
「そうだね」
コーヅと名乗った男子はこの高校じゃないところの制服を着ていた。
似たような制服だけど、コーヅはグレーのチェックパンツに白いシャツ姿。
胸元は開けていてラフなスタイルで、ポケットに両手を入れながらダルそうに立っていた。