冷凍保存愛
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「羽都音ちゃん、起きて。羽都音ちゃん、聞こえる?」
頭の奥の方で誰かが名前を呼ぶ声が聞こえる。
羽都音は頭をおさえながら上半身を起こした。
「いたたたた。頭痛いぃぃぃ」
両手で頭を抱え込んで小さくなった。頭も体も痛い。
「こっち来て」
「……っ」
頭をおさえた手に温もりを感じて羽都音は顔を上げた。
「大丈夫、治してあげるから」
「……コーヅ君?」うっわ、嘘。こんな近くにコーヅ君がいる。あっ、てか、私、頭おさえられてる!
初めて触れられたのに、こんな形で……なんか悲しい。
でも温かい。暖かくて落ち着く。
おさえられている手に頭を預け、目を閉じた。
「ダメダメ、寝ちゃダメだよ。きついけど頑張って起きてて」
頬を両手で挟まれ、じっと瞳を見つめられたらドキッとしてすぐに起きる。
寝てなんていられなくなる。
ぱっちり目ー覚めた。目覚まし時計なんていらない。
「起きた」
「そうだね。じゃ、行こう」
「って、どこに行くの?」
ふわふわした気持ちでこれからどこに連れて行ってくれるんだろうって思って、ワクワクする。
コーヅは羽都音をゆっくり優しく立ち上がらせ、手を繋ぎ、引く。
「ここから抜け出さないと」
「抜け出す?」
「そうだよ。早くここを出ないといけない」