冷凍保存愛
「ここから少し歩いたところに休めるところがある。歩ける?」
コーヅは手を差し出し、安心させるように笑った。
羽都音は迷うことなく手を伸ばす。
「ちょっと休もう。急ぎ過ぎた。ごめんね、それに何も飲み物を売ってるところがないんだ」
「そんなこと気にしないで。私が我が儘言ってるのがいけないから」
コーヅはくすりと笑って、
「羽都音ちゃん、やっぱりかわいいね。全然我が儘じゃないよ」
「でも、私が強羅の家で待っていたらこんなことにはならなかったし、コーヅ君に迷惑かけてるし」
自分のバカさ加減に顔が下を向いてしまう。
ちゃんと強羅が帰ってくるのを待っていればよかったんだ。
私がいなくなったからコーヅ君が探してくれたんだ。やっぱ迷惑かけてる。あれ、じゃ強羅はどこにいるの?
「羽都音ちゃん」
「はい?」
呼ばれた方に顔を向けたら、真面目な顔をしているコーヅがいて、
「僕が羽都音ちゃんを探したいと思ったから来たんだよ。僕の我が儘だ。僕の我が儘で強羅君は一人になってるんだ」
「強羅、どこにいるの? 大丈夫なの?」
「彼は一人でも大丈夫だよ。ほら、あの体にあの腕っぷしだろ、ラグビーやってるくらいだからもしなんかされたらタックルでもして相手倒しちゃうよ」
不安になる羽都音にわざと明るい声でいつものように笑みながら冗談を言った。
「だよね、強羅だもん、大丈夫だよね」
「そうだね」
「あいつは一人でも大丈夫だよ。相手が逃げちゃうっていうか」
コーヅは頷きながら笑み、羽都音はなんとか落ち着きを取り戻した。
この場所がなんか変だってことも一緒に心の奥に隠した。