冷凍保存愛
「一つ聞いてもいいかな?」
「ん、いいよ。なに?」
「羽都音ちゃんはさ、卒業したらどうするの?」
「私? 私はそうだなあ、今はピアノの先生になりたいかな。将来的にはこどもにピアノを教えたいな。それまではできればどこかでコンサートとかしてみたい」
「ピアノやってるんだね、ピアノってその時の気持ちが全て音に出るし、同じように弾くことは二度とできないから、そういう意味で儚いよね。でもそれが美しくもある」
「もしかしてコーヅ君もピアノ習ってるの?」
「そうだね。やってたよ」
何かあって今はやっていないんだと羽都音は感じてそれ以上突っ込んだ話はしなかった。
もしかしたら言いたくないことだってあるかもしれない。
「それじゃあさ、コーヅ君はどうするの? 卒業したら何するの? やっぱり進学?」
「やっぱりって?」
「だってその制服、超有名名門進学校のだよね。だいたいみんな大学、そのあとは大学院とか行くのかなって、勝手に思ってる」
コーヅの学校は羽都音が通っている高校よりも遥かに入るのに難しい学校だ。
この学校から日本のトップ3やそれから海外の一流大学へ進学する生徒がほとんどだ。
「みんなじゃないよ。就職する人もいるよ。少なくとも僕は進学はしない」
「大学行かないの?」
「そうだね。羽都音ちゃん、休みの日は何をしてる?」
「休みの日? んー……映画を見たり、ファミレスでずーっとしゃべってたり、公園で今みたいに座って周りの人見てたり、かな」
「道子ちゃんと?」
「そう。ほら、私クラスに友達いないから」
「いない?」
「最初インフルエンザで休んじゃったから。もうグループできあがってた」