冷凍保存愛
「あのあと小堺のことを調べてみたんだ。そして、あいつも山際君同様に君のことを調べていた」
「そんな。なんで私のことを。あいつ、」
「ノートのことだろう? あいつだってバカじゃない。お前が自分のことを疑っているのを察知したんだろう。でだ、何がどうなっているのかを探ればすぐにその答えは見つかるさ。あいつだってクラスの一員なんだ」
道子は悔しそうに爪を噛んだ。
「それから、真鶴のこともな」
「はっ?! なんでそこで羽都音が出てくるんだよ、あいつは関係ねえだろうが」
「強羅君っ!!」
道子が強羅の腕を叩く。
「すまん。つい。でも先生、小堺と羽都音に接点はないはずです。クラスだって違うし会ったことだって一回しかないはず」
「そうでもない。山際君と真鶴は友達だろう? しかも真鶴はインフルエンザで学校初日から一週間休んだ。そのこともあってかクラスに友達がいない。真鶴はことあるごとに山際君のクラスを訪れてただろう?」
「そんなこと一言も言ってなかったぞあいつ」
「時間も経ってたし、言う必要もないって思ったんじゃない?」
「なんであいつ言わねえんだよ、っとに。まさか、小堺は羽都音と自分が同じ境遇だとでも思ったってことですか?」
「そんなところだろう」
「信じらんないあいつ。そんなことくらいで。羽都音とあいつじゃぜんぜん違うのに! ばっかじゃないの! あったまくる」
鼻息荒く毒づく。
「もしかしたら真鶴ももう捕まってるかもしれない」
「どういうことですか」
「それをこれから確かめるんだ。だから二人とも協力してくれ」
小田原の言葉に二人とも返すことばがなかった。
今の今まで小田原が犯人だと思っていた。
「先生が誘拐したんじゃないんですね?」
「山際君、なんで私が自分の生徒を誘拐しないとならないんだい? 教師は生徒を守るものだよ」
道子と強羅は顔を見合せ複雑な思いで小田原に目を向けた。
バックミラー越しに目が合い、二人を安心させるようにいつもの笑みを顔に浮かべた。