冷凍保存愛
小田原は車を自宅の裏手の駐車場に停めたあとすぐに車内に催眠ガスを撒き、道子と強羅の2人を眠らせようとした。
その間に地下の研究室へ走り、準備に取り掛かった。
すぐにここに小堺が羽都音を連れて来るはずだ。小堺にはこの家への裏ルートしか教えていない。地下へ入ることのできる道だ。
急いで鍵を開け、ドアを蹴っ飛ばしながら中へ入った。
デスクの上に置いてあったファイルや資料が床に乱雑に撒き散らされているのを見て睨み、舌打ちをした。
散乱しているファイルの中から羽都音に関する資料を見つけ出し中身を確認する。
【ペイシェントファイル7】
□ 氏名:真鶴羽都音(Manazuru Hakone)
□ 年齢:16
□ 性別:女
□ 性格:柔軟、温厚、真面目
□ 血液型:A
□ 得意分野:現代文、古典、英語、音楽
□ 将来の夢:ピアノ講師
□ 未婚(未経験者)
個人ファイルのトップページに記載のある情報だけに目を通した。
今もこの情報に間違いがなければすぐにでもカプセルに入れられる。もっと詳しい情報はファイルの中に細かく記してある。
小田原が担任になった時点で目をつけていた生徒の一人だ。
昨年、一番後ろのあの席にはアノ女生徒が座っていた。
アノ女生徒と羽都音は性格も容姿もよく似ている。それが小田原が羽都音に目をつけた理由でもあった。
小田原はこのクラスを受け持つことになった時に名簿に目を通し一通り調べて狙いを定めていた。
そこへ運よく羽都音が始業式当日にインフルエンザになり学校を休むと連絡があった。
これは舞い降りてきたチャンスだとばかりに生徒みんなが始業式で体育館に向かった後、こっそりと教室の後ろに机と椅子を用意し、そこを羽都音の席として座席表に付け加え、準備は整った。