冷凍保存愛
首を振り、嫌がる羽都音に近づく小田原の目の中には既に小堺の顔はない。羽都音しか映っていない。
「……せんせ?」
「真鶴。君は未来に生きるチケットを手に入れたんだよ。見てごらんこれを。素晴らしいと思うだろう」
並べられているカプセルを指した。
そこには分厚くて頑丈そうな半透明のカプセルが一列に並べられている。
羽都音にはそれらは棺桶にしか映らなかった。
カプセルから太いホースが出ていてそれは部屋の左右の壁に設置されているいくつもの巨大なタンクに繋がっていた。
「君は今からこの中で眠りにつく。近い未来にそこで君と私たちは目覚めることができる。今とは違う未来を見てみたいとは思わないかい? ここに来たくても来られない人がいる中で君は選ばれたんだ。永遠の未来で共に生きよう」
「…………そんなところ、その、いや……です。そんな未来、見たくない」
壁に背を付けて少しずつ横に移動する。
「そんなわがままを言っちゃダメだよ」
やさしい声にはぬめりがあって背筋に鳥肌が立つ。
「未来なんて、みんないないのに、そんなところ行きたくない!」
「行くんだ」
「……嫌です」
「行くんだ」
小田原の顔に笑みが消えた。
目は冷たく雰囲気も氷のように冷ややかになった。