冷凍保存愛
「この、この中に……私も入るってことですか」
「そうだ」
なんとか時間を引き伸ばそうとした。その間に逃げる道がないか必死で考えようとした。
「この人たち、誰なんですか」泣きそうになった。
「このペイシェントたちも皆選ばれた人だ。だから安心しなさい。君一人じゃない」
「……生きてるんですか?」
「未来で目覚めるんだよ」
「……生きてるんですか?」怖くて涙が出る。
「今は長い休眠状態だ」
「なにそれ……。嫌です。助けて!!」
怖さに我慢できず走った。
来た道を走って階段を上がったが扉は固く閉められていた。
「助けて!」
扉を叩いてもびくともしない。押しても引いても開くことはない。
「小堺君!」
「聞き分けの無い子ですね。小堺君に助けを呼んでも彼は私のアシスタントです。助けに来ませんよ。それになぜ助けがいるんです?」
ぎしっと音を立てて階段を上がってくる小田原は手術用の手袋をはめながらゆっくりと羽都音に近づいてきた。
「やめ……」
追いつめられた羽都音は逃げる場所もなくずるずると壁に背を預け床に滑り落ちた。
「さあ」
気持ちの悪い声。
小田原の目は気持ち悪く光り、羽都音の肩を掴んだ。