冷凍保存愛
車のドアが薄く開き、そこから新鮮な空気が入ってきた。
強羅は朦朧とする意識の中でも窓を叩き続けていた。両手の拳は血だらけになっている。
痛さで眠ってしまうのを防いでいた。
「てかさ、君何してんの? こんなとこで何やってんの? 起きなよ」
耳に届いた声に強羅は瞬きをしてドアを思い切り蹴り飛ばした。
「っはーーーーーーーーー!!!!!!」
転げ出るように車から体を投げ出し空気を肺いっぱいに吸い込んだ。
直後、車に戻り、道子を引きずるようにして外に出した。
「おい! しっかりしろ! おい!」
揺すって起こそうとするが道子は脱力していて動かない。
「大丈夫。気を失っているだけだ」
「おまえ! まじ助かった」
側にはコーヅがいつも通り、ポケットに手を入れて立っている。
「死ぬかと思った」
「まだ大丈夫さ。よかった君がちゃんとここにいてくれて」
「てかおまえどこ行ってた? 俺ら車に乗せられて、それから」
「一周して戻ってきただけだよ。カムフラだね」
「一周して戻ってきた?」
「そ。あいつは君たちを車に積んで一周して違う入り口から地下に入ったってわけ」
「積んでとか言うなよ。で、なんでそんなまどろっこしいことを」
大きく呼吸をしながら強羅が自分の両手をさする。
「まどろっこしいことをしているからだよ。そんなこと話してる時間ないんだけど。手、痛いと思うんだけど我慢してね。じゃ、そろそろいいい?」