冷凍保存愛
「さ、真鶴。君は今までのペイシェントたちとは違うと私は信じている」
肩を強く掴まれて連れ戻された先には自分の名前が書かれたシールが貼ってあるカプセルが大きな口を開け、羽都音が入るのを待っていた。
息を飲んだ。
この中に入れられる。恐怖に体が震え出した。
「先生に任せればいい。それでいい。大丈夫だ」
「…………」
首を振りつつ小さく後ずさる。隣のカプセルの中は曇っているが顔のところはうっすらと見えている。
氷のように白く固まっているヒト。自分と同じくらいの高校生の女子が眠っている。
死んでいるようにも見えた。
呼吸が荒くなった。
「すぐに楽になる」
小田原の言葉が決定づけた。
『ころされる』
羽都音は目の前にいる小田原をおもいきり力任せに押して走った。
どこかに出入り口があるはずだ。
一つじゃないはずだ。
そう信じて、巨大なタンクの裏手へと走る。
「……はあ。君もまた皆と同じですか。そうなると私の研究はまだ終わることができない。ほんとにみんな分かっていない」
首を振りながら眼鏡をくっと上げ、逃げる羽都音の方へ歩み寄る。