冷凍保存愛
「真鶴。あきらめなさい。ここから外へは逃げることはできない。ここが一番いい場所だって分かってほしい」
「来ないで!」
「ほら。ここには君と私しかいない。一緒に未来へ行こう」
どこかにあるはず。どこ?
羽都音は壁を手で触りながらどこかにドアがないか調べながら小田原から距離を取る。
この部屋は天井がものすごく高くなっている。しかし地下ということもあり窓は無い。
蛍光灯の明かりで真っ白く光っている。
部屋は広い。10メートルほどか。
タンクの後ろには何もない。
反対側のタンクのところかもしれない。
羽都音は巨大なタンクの間をを縫うように抜け、反対側へ行こうとした。
「ここは君より私のほうが詳しいんだよ」
目の前に小田原の姿。
見下ろされているその目は笑っていなかった。
咄嗟に振り返り今来た道を戻ろうとしたところで後ろから羽交い絞めにされた。
「いい加減にしなさい」
耳元で聞こえた言葉、全身に悪寒。
無我夢中で羽都音は小田原の手に噛みついた。
悲鳴を上げた小田原の手が緩んだ隙に逃げた。