冷凍保存愛

「ばっかじゃねえの。そんなとこ行きたくもねえわ。行きたいなら一人で行けよ」

「君もつくづく残念だね。そこがどういうところかも分からないのによく言える」

「おまえだって行ったことねえだろうが。ふざけんな」

「僕はあとで行けるさ。ちゃんと最後まで見届けてから僕もこのカプセルに入ることになっている」

「ああそうかよ。じゃあせいぜい一人で行ってきな。羽都音は行かせないけどな」

「それはできないよ。彼女も私のペイシェントだ。もう行くと決まっている。それは変えられない」

「何がペイシェントだよ。頭おかしいんじゃねえのか? 誰もお前になんて着いて行かねえって。奥さんだって愛想つかすぞ」



「…………妻と娘はもう行っている」

「あ?!」




 小田原が誇らしげにカプセルの方に手を伸ばす。


 強羅はそれを目で追う。その先には、





「……ああ、本当だ。これ、奥さんと娘さんだね。しかもこのプロファイルを読む限りだと…………ついさっきだ」



 コーヅが立っていて、プロファイルを読み上げた。



 コーヅが顔を小田原に向けたとき、小田原の持っていたスタンガンが音を立てて床に転がった。

 顔も体も全てが震えだし、後ろに後ずさる。

 すかさずに強羅がスタンガンを遠くへ蹴り飛ばす。

 しかしそんなことには気も留めていない。強羅のことなんて目に入っていない。



「…………………おおおおおおおお、おまえ………………なんでここに……」






 顔面蒼白。全身は大きく震え、唇は紫色に変わっていった。


< 202 / 225 >

この作品をシェア

pagetop