冷凍保存愛
「と…………」
「と? なんだよ『と』って」
武器が無ければ小田原なんてちょろい。
強羅が指をばきっと鳴らし、小田原に狙いを定めた。
「と…………塔ノ沢、おまえがなんでここに」
小田原は明らかにうろたえていた。口の中がからからになった。しきりに唇を舐め回す。
強羅のことは無視し、震える足で、乱れた白衣を直すこともなく後ろへ後ずさりながら三番目のカプセルをじっと見続けた。
「…………俺だよそれ、オダワラ先生」
小田原はピタリと止まり、今度は震える手を伸ばし、三番目のカプセルまでふらふらしながら近づく。
カプセルを抱きかかえるようにして顔を確認し、中の温度、酸素、プロファイルをチェックした。
「そそそ…………そんな。そんなことがあるはずない。ここに、ここに俺のペイシェントがいるのに」
カプセルにしがみつく。
「あんたのペイシェントなんかじゃない。そんなもんじゃないから」
ポケットに手を突っ込んだままゆっくりとカプセルを一周し、小田原に近づく。
「おおおまえ、くそ、おおお俺の研究が……そんな、そんな。こんはなずじゃない。これは何かの間違いだ」
カプセルを無心に撫でまわす小田原はもはや正気じゃなかった。
目は血走り、口からは泡を飛ばし、涎を垂れている。
「やっと探し出した」
コーヅは自分の入っているカプセルを愛おしそうに眺め、膝まづき、自分の顔をじっと見た。