冷凍保存愛

「コーヅ。てことはおまえの妹は……」

「ああ、ちゃんとここにいるよ。見つけた。ようやく探し出した。やっと会えたよ」


 コーヅは自分の入っているカプセルの隣のカプセルに顔を向けた





 そこには、『塔ノ沢あたみ』と書かれたプロファイルが貼り付けられていた。



 
 カプセルの中には塔ノ沢あたみが真っ白に凍りついていた。髪の毛は白く、唇はうすく氷の膜に覆われ、まつげ、まゆげは白く細い線のように凍っている。


 呼吸はしていない。そこに生気は無い。

 



「小田原、おまえほんとに最低だな。こいつんとこ兄妹でこんな目にあわせてたのかよ」



 強羅はこの怒りを今すぐにでも小田原にぶつけたかった。大きく肩を揺らしている。




「……何を言ってる。あたりまえだ。この兄妹は今までの中で一番だ。研究材料としては最高だった。今度こそ失敗しない、絶対にうまくいく。今まではペイシェントが悪かったんだ。しかし今回は……試験体として最高のものが手に入った。この兄妹、真鶴、私の妻と娘……」




 小田原は天を仰ぎ見て自分の世界に入っている。





「ペイシェントとか試験体とかって、人間をおもちゃみてえに。クソだなおまえほんとに。って、待て。もう一人いるだろう。それは、誰なんだよ」


 一番目のカプセルを指差した。




「そのペイシェントは失敗だった。そうでしょう、小田原先生、最初は誰でもよかったんだ。手頃な試験体を決めて一番初めにカプセルの中に入れた。しばらく様子をみていたよ。でもそれだけじゃだめだということが分かった。そうだろ、小田原先生。そこからたくさん学んだはずだ」


 涎を垂らしながら小刻みに震え、自分自身に語りかけている。


 狂い始めてきていた。

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