冷凍保存愛
「殺された? いや違う。おまえは眠っているだけだ。コールドスリープだ」
「コールドスリープ? そんなSFみたいなものあるわけないって言ったのは、あんただよ」
「いや違う。現におまえはこうして現れている。それが証拠だ。私は間違ってなどいなかったんだ!」
「自分の奥さんと娘まで手にかけて自分はのほほんと生きている。最低な奴だね」
「何を言ってる。私もこの研究が終わったら、これを託すことができたらカプセルに入る。それに妻と娘は喜んで入った」
「死ぬなんて思ってないからだろ。この中に入っている人間はみんな死んでる」
「違う!」
「本当は気づいてるんでしょう?」
「違う!」
「みんなお前に殺されたんだ!」
「違う。俺じゃない!」
「ここまで見せといてまだ言うのか!」
強羅はまだ意識の戻らない羽都音の方に体を向けたその一瞬を小田原は見逃さなかった。
勢いよく立ち上がり、走り、強羅の脇腹に蹴りを入れた。
不意を突かれ、みぞおちに入った蹴りに苦しくて息ができず腹を抑えた。
立て続けに腹を蹴られ崩れ落ちたところに顔面に蹴りが入った。
「おまえごときに邪魔はさせない!」
強羅に走り寄ろうとしたコーヅに、
「動くな塔ノ沢! そこから動いたらこいつを」
小田原の手にはスタンガン。
予備の物が着ている白衣のポケットに隠されていた。