冷凍保存愛

 小田原は脱力した羽都音を抱きかかえ、カプセルの中に入れようとしている。


「くそ! 羽都音! 起きろ! 起きろ!」


 怒鳴る強羅は小堺を睨み、「てめえもすぐにぼっこぼこにしてやるからな」暴言を吐いた。


「羽都音!」



 力の限りに叫ぶが羽都音はぐったりとしていて反応がない。




 小堺は強羅を歩かせながらしっかりとカプセルを確認していった。



「小堺、おまえはこの部屋に来るのは初めてだろう? かなり早いがいい機会だ。そこに並んでいるカプセルをよく見ておけ。これはおまえがこれから俺の後にしていくことだ。今からそれを見せてやる。終わったらそこにいる男……そいつを同じようにやるんだ……一緒にな」


 小堺は小田原の言葉を聞きながら端からカプセルのプロファイルを読んでいく。


 カプセルの中全ては見えないが顔だけはうっすらと見えていた。

 見覚えのある顔の前で足を止めた。

 両目を見開き、息を飲んだ。




「せ…………先生」





 肩で浅く息をしながら、強羅を気にしながらカプセルを覗き込んだ。




「これって、奥さんと娘さんじゃ……ないんですか」


「ああ、そうだ。喜んで入ってくれた」


「…………」




 驚愕の表情で小田原を見、もう一度二つのカプセルの中を覗き込んだ。




 言葉を失った小堺は首を左右に小さく振り、視線だけを小田原に向けた。


 視線の先では小田原がカプセルの中へ羽都音を抱きかかえて横たわらせているのが映る。

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