冷凍保存愛
「知らん! なんだそれは。そんなもん知らん! 俺に意見をする気かおまえは!!!」
「……その程度でしょうねえ」
「……なんだと」
「これは……俺が彼女に贈ったものなんですよ」
「……何を言っているんだおまえは!」
「あんたは全然気づいて無かったみたいだけど、俺はずっとあんたを疑ってたよ。
ここまで来るのに時間がかかった。でも、これをあんたの机で発見した時に全て分かった。
あんたがあたみちゃんを連れ去った犯人だったんだってな。彼女がいなくなってつらくてつらくて仕方なくて、次の年俺はクラスを移動したんだ。学期末のテストでそうなるようにした。
そうしたらそのクラスにもおまえは関わっていた。あのクラスに関すること全てから離れたかったのに」
「転校してきたんじゃなかったのかおまえは」
「……なんの話? 違うよ。それにそんなこと書き換えるのなんて簡単だよ。俺は入学したときからあのクラスであたみちゃんと一緒だった。隣の席にいたんだ」
「おおおおおまえ、何を言ってるんだ。じゃあ俺が見たおまえの情報はなんだったんだ」
「そんなこと知らない」
狼狽する小田原には状況が理解できていない。スタンガンを持っている手は震えている。
「それに、さっきここに来てコーヅさんを見て驚いたよ。
あたみちゃんも無事なんだって思ったからね。でも話を聞いていたらそうじゃないってわかった。
……コーヅさんもここにいるなんて。あたみちゃんの隣のカプセルに入れられているなんて。いくら連絡してもつながらないはずだよ」
小堺はあたみとコーヅの入っているカプセルを交互に見て涙を落とした。
「……やっぱり君か。雰囲気がぜんぜん違っていたから最初学校で会った時は気づかなかったよ。でも……あたみと一緒に何回も会っていれば覚えてもいる。君がその髪留めをポケットに入れた時点で気づいた。君がこいつを探っていることも。騙されたふりをしてここに来ていることもね」
「ええ」
「代々木君だね」
「はい。コーヅさん、本当にすみませんでした。あたみちゃん、守れませんでした」
最後の方は涙で声が掠れてしまっていた。