冷凍保存愛


 小堺代々木。

 彼はあたみの彼氏だった。

 失踪事件の捜査を独自にしながら時間はかかったがここまでたどり着いた。

 そんな時にアルバイト先に小田原夫妻とその娘が食事に来た。


 どこかの悪ガキが虫かご一杯にバッタを詰め込んで店の裏手のゴミ箱に放置していたのをゴミ捨てに行くときに見つけ、小堺は虫かごの蓋を開けて外に逃がしてやろうとした。

 バイト時間中だったのでそのまま放置し、バイトが終わってから裏手に回り、虫かごを蹴って虫を外に逃がしてやっていた。

 そんなときに羽都音と道子に遭遇し、バイトをしていることがバレると思いダッシュで逃げた。

 そんなことも今となれば小田原に目をつけられるいい機会に繋がった。



 あと一歩で小田原の化けの皮が剥がれる。

 しかしきっかけがない。

 そのきっかけを考えていたところに『真鶴を連れて来い』という話がきた。

 チャンスだ。

 羽都音には申し訳ないが彼女をエサに小田原の家の内部に侵入し、ここを突き止めた。

 クライオニクスの話しがでた時点から小田原が犯人だと確信したが証拠がない。

 それになかなかここには入れてくれなかった。

 自分が小田原を心から信頼していると思い込ませるために言いなりになり、言われた通りにことを運んできたというわけだ。




「おまえら…………寄ってたかって俺の研究の邪魔ばかりしやがって! みんなまとめてぶっ殺してやるからな!」



 小田原はスタンガンを持つ手に力を込めた。狙う先は羽都音だ。


 振り上げた手。

 それをカプセルの中で寝かされている羽都音の胸に押し当てたら彼女はもう二度と目覚めはしないかもしれない。



「ふざけんな!!」



 言葉より体が先に動いた強羅がカプセルを縫うようにして走り、小田原の手が羽都音に振り下ろされる寸前で小田原を殴り飛ばした。


 一緒になって転がる強羅の背中にスタンガンが押し当てられた。




 にやりと笑った小田原同様、また、小堺も口元を上に上げた。

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