冷凍保存愛
「おい。ほんとにここから出してもダメなのかよ」
居てもたってもいられなくなった強羅が小堺とコーヅの間に入り込んだ。
同じように電源をさがしながら。
「無理だよ」
「このカプセルから出たらなんとかなんじゃねえのか。なんだったら俺ぶっ壊してやるけど」
「ああ、君ならやりかねないけどでもね、この中に入るためには死が原則なんだ。つまり、生物としての活動が全て停止した時点でマイナス196度で凍らせられる。マイナス196度だよ。そんな中で生きていられるとおもう?」
ことばを無くした強羅と小堺はうつむき悔しさに声も出ない。
「やだなあ、そんな暗くならないでよ。ほら、強羅にしてみたらいいでしょ? 僕がいなくなったら羽都音ちゃんを独り占めできるよ」
無理矢理明るくつとめるコーヅの顔にも悲しみが浮かんでいる。
「……うるせーよ」
強羅も無理やりコーヅに合わせるが、涙をこらえているのか目を合わせない。
「代々木君もさ、こうやってみつけてくれただけで、妹も喜んでるよ」
「……あたみちゃんじゃなきゃダメなんです」
「それは……きついけど、あたみはもう帰って来ないよ」
「…………なに、その話……それ、本当のこと?」
か細い声は羽都音からだった。ようやく意識を取り戻した羽都音はカプセルの中で上半身を起こし、今の話をとぎれとぎれ聞いていたと言った。
「コーヅ君」
「……ごめん」