冷凍保存愛
「撮れた」
静寂を切ったのは、道子だ。
「……道子ちゃん、どうして」強羅が道子の方に顔を上げた。
「小堺だよ。車の横で気を失ったままの私を助けてくれたの。これと一緒にね」
道子の手にはビデオカメラとスタンガン。
小堺は強羅たちが中へ入ったのと入れ替えに外に出て、道子のことを探した。
彼女はここに来ていると確信していた。
「全部聞いたよ。それで、私は陰からこのカメラに収めてたってわけ。最初からは撮れなかったけどね。助けに入れなくてごめんね羽都音」
「道子」
強羅の肩からおろされた羽都音は道子の顔を見て顔を緩め、側に寄った。
「これを警察に出せばこいつの罪が丸裸になるってこと」
「さすがだな」
「強羅君、私をダレだと思ってんの?」
「最後まで強気だし」
「当然。何があっても動じない。それがジャーナリストに必要なことだもん」
得意げに鼻を鳴らし、並べられているカプセルを端から撮り続けた。しかし、その手はやはり震えている。
無理して強がらないと崩れ落ちそうになっていた。
「こんなひどいこと、信じられない」
「……ねえ、ねえ、強羅、コーヅ君は? どこにもいないよ。もしかして……」
「…………」
「まさか。もういないの? 私もっと話したい事あった」
「……あいつもそうだと思う。でも……時間はもう残ってなかったんだよ」
「どういうこと」
「あいつは、自分自身と妹を見つけ出したら消えてしまうと言っていた。だからここまでずっと居れたってことはあいつなりにずげー頑張ったんだよ。お前と少しでも長く居たかったんだと思う。だから、分かってやれって」
泣くのをこらえながら辺りを探したがどこにもコーヅの姿がない。
思い出したようにカプセルに目を落とす。