冷凍保存愛
「友だちはあきらめよう。一年の辛抱だ。道子に会いたいな」
早々に友達を作ることに見切りをつけた羽都音はグラウンドを通るはずのコーヅの姿を探したが、最後の生徒が入ってきて校門が閉められてもコーヅの姿を確認することができなかった。
入口は一つしかないのでここから出ていくはずなのに…
「おーい、真鶴来たかー?」
教室の前のドアから担任が顔をのぞかせ、羽都音を探していた。
「あ、はい。私です」
手を挙げて立ち上がると、ちょっと来いと言われ、小走りに後ろのドアから廊下に出た。
担任の名前は小田原という。長身に銀縁メガネ、30歳そこそこだろうか、人の良さそうな雰囲気があり、何でも話せそうな優しい雰囲気も備わっているためか、生徒からの人気も高い。
「お前休んでたからいろいろ渡すものがあるぞー。職員室まで一緒に行こう」
「はーい」
羽都音が教室から廊下に出るのをクラスメイトたちは無言でじっと眺めていた。
少し不気味に思ったが、初めてだし仕方ないと考え、速足で廊下に出た。
担任の少し後ろを歩きながら、うわー、こんな優しそうな先生が担任でよかった。
友だちはしばらく出来そうもないけど、席と先生にはめぐまれたことだけでもラッキーって思わないと。と心の中で思っていた。