冷凍保存愛

 その考えられない行動に固まって、無表情の羽都音にコーヅは「借りるだけだよ。調べてちゃんと返す」と声をかけた。

 びっくりして何も声にならない羽都音は頷くしかできない。

「安心して。気になることがあるだけだ。明日にでもちゃんとここに届けておく」

「わかった。そうした方がいいと思う」

「そうだね」

 安心させるように笑い、髪留めをポケットから出して見せ、またポケットに戻した。


 そろそろ戻ろないと見回りの警備員が来る時間だ。

 二人同時に時計を見て、職員室に面しているグラウンドに目をむけた。

 校門のところからゆったりと歩いてくる警備員らしき人が入ってきて、羽都音とコーヅは見つからないように職員室を後にした。




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