冷凍保存愛

「あれ、お前たちこんなところで何やってんだー」

 間延びした男性の声には聞き覚えがあった。

「小田原先生!」

 目の前には私服の小田原がいて、傍らには奥さんとその横には手を引かれた娘が一人、仲良く三人で手を繋ぎながら歩いているところだった。

 ラフなチノパンに白いシャツに相変わらずの銀縁メガネ、奥さんはベージュ色の上品なワンピースに茶色いパンプス、娘はベイビーピンクのレースのついたワンピースに白いソックス。

 どこから見ても『いい家庭』にしか見えない。

 羽都音と道子はぱっと駆け出して小田原のところまで走り、奥さんと子供に挨拶をした。



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