冷凍保存愛

「えー、先生本当に結婚してるんだ、残念」

 道子のおちゃらけた言い方に羽都音が笑う。

 学校の女子の間では小田原は独身かもしれないという噂があり、狙っていた女子も少なくない。

「あんまりからかうと後が怖いぞー」

「からかってないよ。本当に女子の間じゃ人気でさ、先生狙いの子もいるし」

「ちょっと道子」

「あ」

 奥さんがいることを気にして羽都音が道子の腕を軽く叩いた。

「ごめんなさいそんなつもりじゃ」

「いいんですよ。気にしないで。若い女の子に人気があるなんて私も嬉しいわ」

 小田原の妻はそんな二人を見て笑いながら「気にしないでね」再度言い、そんな優しく懐の深い奥さんに羽都音と道子は羨望と憧れの混じったため息を漏らす。



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