冷凍保存愛
特進クラスでは道子が女子の輪の中心にいた。
彼女は明るく陽気な性格のせいもあり、また分け隔てなく接することもあってなかなか人気があった。
しかしその視線の先は教室の隅っこ、一番後ろのごみ箱の近くの席に座り静かに本を読んでいる小堺を捉えていた。
ゴールデンウィーク中に見たあの奇行の真相を暴いてやると、新聞部魂に火が付き、目下パパラッチのごとく自分の位置を決めていた。
小堺はクラスに友達もいなく、いつも一人だ。学校に友達がいるような気配はない。
誰とも話さずに一日が終わることもある。
それに加え陰気な雰囲気も重なり、近寄りがたいオーラもあった。あの件があってから道子は小堺は謎に包まれている存在として記憶していた。
「おーい、小堺、ちょっといいかー?」
小田原がいつも通り間延びした声で教室の前から顔を覗かせ小堺を呼んだ。
まさか呼ばれるとは思わなかったのか小堺は一瞬ドキリとし、小田原の目が自分に向けられているのを確認すると、急いで席を立って後ろのドアから足早に出て行った。