冷凍保存愛
小田原の少し後ろを小堺は背中を丸くし、小さくなりながら歩いた。
廊下を曲がって階段を降りようとしたとき、上の階から降りてきたコーヅとすれちがった。
コーヅは自分の横を通り過ぎる小田原と小堺を見て目を丸くした。
見たことがある。そう思った。心臓に杭を打ち込まれたような衝撃につい息を飲んだ。
「俺、お前のこと知ってる」
「え」
コーヅの声に小堺が振り返ったが、小田原に『なんだ』と聞かれ、いいえと小さく答え、体の向きを小田原の方へ向けた。
「あいつ、知ってる」
コーヅは迷うことなく後を追った。
職員室に先生はあまりいなかった。
しかし、生徒はかなりの人数がいて、事務員たちが忙しく対応していた。
先生たちはそろそろホームルームが始まる頃だ。皆、各々教室へ向かったのだろう。
コーヅは小田原と小堺をじっと観察し、何か不審な動きがないかしっかりと見ていた。
空いている机の隅、つまり、羽都音とコーヅが髪留めを見つけた机の上にプリントをどさっと置いた小田原は、もう少しあるからちょっと待てーと言い、自らの机に戻って行った。