冷凍保存愛
唾を飲み込むと一旦辺りを気にし、震える指を一度ギュッと握り勢いよくパッと開き、それでも震える手で髪留めを素早く手に取った。
そして、それをひっくり返したり、また表にしたりして隅々まで見落としのないように見て、もう一度唾を飲み込むと、すっと自分のズボンのポケットに忍ばせた。
ドキドキする心臓を抑えるように小田原の方を見たがまだ話に夢中で自分の行動には気づいていない。
ほっとすると小堺は小さく息を吐き、もう一度ポケットの上から髪留めを確認するように手を置いた。
小堺の様子を背後から見下ろし、氷のように冷たい視線を突き刺しているコーヅにいつもの優しい笑みはなかった。
怒りを帯びた赤い目だけがそこにあった。
戻ってきた小田原に、ここは誰が管理しているんですか? と聞くと小田原が少し怪訝そうな顔をした。
「だってそのこの机こんなに埃だらけだし、だから掃除とかしてるのかなって思ったんです」
「ああ、おまえは綺麗好きなんだな。気にするな。ここは誰も使ってない。先生が荷物置きにしているところだ」
「ああ、そうなんですね、すみません」
「じゃ、それ持ってけー」
「はい。それでは失礼します」
羽都音は放課後に教室でコーヅを待っていたが、結局コーヅが来ることはなく、5時になる頃、待つのを諦めて肩を落としながら家路についた。