冷凍保存愛

 家も近所で歩いて5分くらいの位置にある。

 挨拶に行けば行ける距離だが、学校で会ってびっくりさせようと思っていた。

 しかし、この目の前の静まり返っている状況に自分が先にびっくりしている状態に陥っていた。


 ふと気配を感じ廊下を二度見すると、制服を着た男子が一人、廊下を降りていく後ろ姿が目に入った。

 慌てて追いかけようと声をかけたが待ってはくれず、階段を駆け下りてしまった。

 一瞬だったが、この学校の制服じゃないように感じた強羅だが、あまり深くは考えなかった。

 それはそうだろう、まさか他校の生徒がうろうろしているなんて誰も思わない。


 仕方なくもう一度職員室に戻り、勝手に職員室内をふらふらし、ふと大きなホワイトボードの前に目をやるとそこには赤字で大きく『創立記念』という文字が今日の日付のところに書かれていた。


「うっそー。今日って創立記念日? そんなこと聞いてないし、今日から学校だって言ってなかったっけ? まじかよ、転校初日でこれはねえだろ。ありえなくね? 親父頼むよまじで。それ先に言っといてよ。俺バカみたいじゃん」


 がっくりとうなだれた強羅は二回ほど大きくため息をつき、ふざけんなよと小声でぶつくさ言いながら、最後に仕方なく昇降口まで向かった。



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