冷凍保存愛

「羽都音、俺たち部屋の中で待ってるから、お前ゆっくりしてろ」

 部屋に入り、トイレの前を通過するときに強羅が遠慮なくそう言った。

 羽都音はトイレの戸に耳をべったりとつけて聞き耳を立てていた。

 三人の計画はこうだ。


 まず、羽都音が腹痛を装い小堺に声をかける。

 で、中に入る。

 その間にコーヅと強羅がなんとか部屋の中に入り込む。

 それから強羅が小堺を引き付けている間にコーヅが部屋の中を調べる。


 コーヅ君が部屋の中を動き回ってたら怪しまれない? という羽都音の心配は、僕はそういうのけっこう得意だから大丈夫だよ。それにほら、強羅君は口がうまそうだから小堺君を丸め込めると思うし。という返事で結果まとまった。


 そして羽都音はお腹なんて痛くもないのにトイレの中でじっとしていなければならなかった。

 二人の調べものが終わるまで出てきてはならないという戦法のため、蓋を閉めた便座の上に座り、頬杖をつきながら腕時計の時間を見た。


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