死が二人を分かつとも
「……ん?」
詰め物出来る物をそもそも持っていなかったと、考えた時、耳に音が入り込んで来た。
今まで声を出していたから、聴覚は正常に働いているのは分かっていたけど、他の音が聞こえたことに安堵する。
カサカサと、擦れる音。ビニール袋をこすり合わせれば、こんな音になるかも。
音する方に自然と足先が向いた。
走り出し、助けて下さいと言いたいけど、まだ、何がいるか分からない。
さっきも思ったけど、もしかしたら怖い人かもしれないし、視覚で捉えるまでは安心出来ない。
ゆっくりと足音が出ないように進む。徐々に確かになる音。
もう視界に入っても良さそうなものだけど。
「……ぁ」
吐息のような声が零れた。
ツタが絡みつく木。もう嫌になるほど見てきたけど、私の直線上にある木には、白い物がくっついていた。
「生き物?」
くっついていた。言葉通りに。
白くて小さい物ーー野球ボールみたいな物が木に止まり、カサカサと音を出している。
小さい物と分かり、危機感が薄れる。
人じゃないのは残念だけど、怖い何かよりはよっぽどいい。
でも、何の生き物だろう?
距離が縮まれば、白い物の姿も分かるけど、私の頭にはあんな生き物の該当結果はなし。
ただ、分かったことがあれば。
「ツタに、絡まっているの?」
木に止まっているではなく、絡まっているの訂正。
カサカサとした音は、その生き物が必死にツタから抜け出そうと体を動かしている表れ。けれども、ツタは動けば動くほど余計に絡まり、見ている分にも察せるほど、かなりきつく小さな体を絞めていた。
苦しくて暴れているのも相まっているのかもしれない。
「今ーー」
手が伸びたのは、自然の流れだ。無視なんか出来ない。
助けるつもりでいたけど、白い生き物は私を見るなり、威嚇してきた。
牙を剥き出しに、小さな体を大きく見せようと羽を広げて。
その全体像に、ある生き物を思い出した。