死が二人を分かつとも

「『あの時』……?」

気になることを聞いた。

あの時ーー言葉からして、あの日。私が真奈を傷つけ、恐らくは岸谷くんが死んだ日のことだけど。

「とぼけてんじゃねえよ、異常者が!逃げて無罪とか思うなよ!お前だって同じ異常者だよ!」

話が見えない。
あの時、私は逃げたのか。
真奈を殺して、岸谷くんも殺して、逃げてそのまま死んだの?

でも、岸谷くんはそれとはまた違う意味を持って話しているようだった。

「ふざけやがって、ふざけやがってさぁ!さっさと叫べよ!あん時みたいに!そうすりゃ、何でも言うこと聞いてくれる異常者来るんだろ!平然と、真奈や俺を殺せる“あいつ”が!俺が一番に殺してやりてえのは、てめえじゃなくてーー」

真実に近づいた矢先、背後から、穏やかな声が聞こえて来た。

葦の先。見えない場所から、声だけが。

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