死が二人を分かつとも

「っ!」

彼を突き飛ばす。

呆然と立ち竦む姿。
葦の原の風景のはずが、教室の映像が紛れ込む。

あの時の焼き回しをしているからだ。

目を開いたまま、夢を見る。

重なる悲鳴、吐き気を催すほどの血臭に。血まみれの彼ーー

『なんで?』

と、子供の問いかけのような顔でこちらを見ている。

「ごめんなさい……」

夢(過去)でも、現実(今)でも、私のすることは変わらない。

彼から、逃げた。

名を呼ばれる。叫ぶように呼ばれる。

けれども足は止まらない。

葦の原が肌を傷つくけること構わずに、突っ切った。

緑の園を走っているはずが、時折、学校の廊下が視界に入る。

目を開けたまま見る夢が続いている。

あの時とまったく同じなんだ。

私は今ーー彼から逃げている。

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