死が二人を分かつとも

「コウモリ?」

牙と翼がある小さな生き物。
間近で見たのは初めてだけど、頭にあるコウモリのイメージとこの生き物は似ている。

「白いコウモリなんて、いるんだ」

生まれつき体が白い生き物ーーライオンやイルカがいるのだから、このコウモリもそれだろう。

黒いコウモリより、こっちの方がいいかも。

「怖くないから」

コウモリに人語を話しても意味ないのを承知で、声をかけてみる。

シャーシャーと猫のそれと同じく威嚇されてしまうのだから、そんな試みをしてしまった。……コウモリって、こんな鳴き声なんだ。

「だ、大丈夫だよー」

だから噛まないでね、とツタをほどいていく。

刃物があれば楽に済むのだけど、無いものに頼ってはいられない。

知恵の輪でもやるつもりで試行錯誤しながら解いていく。

「ここを、こーすれば。ごめんね、もうちょっと待ってね」

いつの間にか、コウモリの威嚇がなくなっていた。声かけが成功したのかもしれない。

噛まれる心配があったから、コウモリの体には触れなかったけど、これなら大丈夫かな。

軽く『いいこいいこ』をし、コウモリの体を手で包む。

あらかたのツタは緩めることが出来た。後は引き抜けばいいと思うけど。

「ちょっとだけ、我慢してね」

完璧に解くことが出来なかったので、力技に頼る。苦しかったらごめんの文字を携えて、コウモリを引き抜いた。

「あ、良かった」

思ったよりも、力を入れずに抜くことが出来た。

手のひらに収まるサイズのコウモリ。ちょこんと座って、こちらを見上げている。

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