死が二人を分かつとも

「旦那、つきましたよー」

「は、はい。ありがとうございます」

備え付けのゴミ箱に包んだガムを捨て、代金を払う。

着いた先は、夜には訪れたくないであろう病院。

仰々しく佇む廃れた白壁は、いかにもな雰囲気を漂わせるがーーここに妻がいると分かりきった男にとっては、楽園か何かに思えた。

進む足取りがスキップ。
ロビーに入れば、妻の母が出迎えてくれた。

「あ、お、おかっ、あ、あの、ど、どうでしたかっ」

「上で待ってるわよ」

喜びと興奮で人語を忘れつつある男に、妻の母が言う。

男の質問に答えていないわけだが、菩薩のような笑みがあれば、答えも同然だろう。

緩む涙腺を、拳握って堪えつつ、男は妻がいる病室に向かった。

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