死が二人を分かつとも

「か、かかっ、看護士さん!こ、この子、指ーー薬指にアザが!」

男に急かされるまでもなく、看護士も説明する気だったのだろう。

心配いりませんよと、看護士は続ける。

「蒙古斑(もうこはん)ですよ」

蒙古斑の知識は、妻と通った育児教室で男の頭にもあった。しかして、男にとっての蒙古斑は、イコール尻に出来るとしかない。

「指にも、出来るものなんですか?」

「腕や胸にも出来ます。ただ、指に出来たのは珍しいことだったので、念のため検査したのですが問題はないと先生も仰っておりました。成長と共に消えていくので、あまりお気になさらないで下さいね」

看護士に命でも救われたかのようにほっと息つく男だった。

女の子だもんなー、アザは大変だもんなー。と話していれば、男の子を抱く妻が言う。

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