死が二人を分かつとも

「あんま騒がない方がいいですよ。死人さんみたいなお嬢さんなら、他の死人さんもこぞって来ますから。ーーって、あー、聞いちゃねえか。もー、仕方がないですね」

花びらのようにユラユラ着地するコウモリ。私から距離を取った場所で、おすわりをしていた。

「怖くないー、大丈夫ー。ほら、お嬢さんがさっき手前に言ってくれたことですよ。手前はあれを信じてじっとしてたんですから、お嬢さんも信じて下さいって!喋れない意志疎通が出来ないよか、こうして対話出来る方が安心するじゃないですか!」

ぺしぺしと、叩き売りでもするかのように己が翼で地面を叩くコウモリ。

にっこりと笑っているようにも思えた。

「笑う、白いコウモリ……」

余計に駄目な種類じゃないか。
こんな動物いるはずがないのに。

「言葉ほど嘘つくもんはないけど、信じなきゃ何も始まりませんって!手前なんかも、ぜってーお嬢さんの手で潰されるとか思って、噛みつく気満々でしたけど、ごらんの通り、無傷!しかもかナデナデのサービスつき!いやぁ、やっぱ信じてみるもんですねー。お嬢さんみたく優しい奴ならわかんでしょ?手前がお嬢さんをどーこーする気はないってー」

ずいぶん饒舌なコウモリだった。
それだけ信じて欲しいーー自分は危険じゃないとアピールしたいのか。

喋る異常性はあるけど、それ以外は無害に思える。

不思議の国のアリスは、猫や兎が喋っても動じずに道を聞いたり、お茶会に参加していた。話を読んだ時はそれほど気にならなかったけど、アリスはかなりの度胸を持っていたのかもしれない。

もしくはーー

「夢……?」

なら、尻餅の痛みはないはず。

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