死が二人を分かつとも
「おっと、ピンと来ましたよ。つか、五体満足状態だから、そーじゃねえかと思いましたが、お嬢さん、自分が“死人さん”になった自覚ないっしょ?」
より混乱してしまうことを言われてしまった。
翼が器用に動くコウモリは、右の翼を私を指差すように使う。
「最初、ここに来た奴らはみーんな言うんです。『これは夢か?』って。お嬢さんもまさにそれ、ドンピシャ。あー、そんな若いのにねぇ。でも、死んじまったもんはしょうがないですね!」
「死ん……」
頭の中で金切り声が上がる。
断片的な記憶。壊れた映写機だ。チカチカ点滅する。
悲鳴、断末魔。
そうして、赤いーー。
「大丈夫っすか!」
斜め上からの声でハッとする。
息が止まっていたみたいだ。肩を上下させる呼吸に、コウモリは心配そうな声をかける。
「えーとええーと、手前のせいですか?びっくり通り越して気分悪くなってんですか!」
「ちが、う」
と、思う。までは口にしないでおく。
頭がこんがらがっているのに、この頭痛。思考を放棄したい。ーーもういっそ、考えなければ楽になるのかな。
「なんて、こと言ってたら……いつまでも、このままだよね……」
痛いまま。何も思い出せないまま。
思考の放棄なんて脳がある限り出来るわけないんだから、きちんと折り合いをつけなければならない。
まずはーー
「白い、コウモリ」
斜め上辺りで飛んでいたかと思えば、私が怖がっていると気遣いまた距離をあけるコウモリを見る。
悪いことしちゃったー、と小さな子供のそれと同じく、しょげている。翼で頭を抱えるオプション付きで。