死が二人を分かつとも

喋る異常性だけで、脅威になる生き物だけど、こんな姿を見てしまえば、何となく危機感が薄れてしまう。

さっき、無意識に『いいこいいこ』した気持ちだ。ちっちゃな生き物だからこそ、可愛くも見えてしまう。

仮にもこのコウモリが危険な存在で私を襲うとしたら、やっぱりあの牙でだろう。

想像してみたけど、手のひらサイズの生き物なら、容易に手で払えると思う。

牙に毒があれば、立ち向かうことも出来ないけど……

「あの……」

話しかければ、顔が上がる。

「その、ここって、どこ……なの?」

正体不明の生き物と対話を試みる。
唇が震えて、ゆっくりなのにかみかみな問いかけでも、コウモリは嬉しそうに答え始めた。

「それもみんな言う言葉ですよ!初めて聞かれた時は、『ここは、ここだ』としか言えませんでしたけど、つか、それ激怒されてうっかり捻り潰されそうになってから、考え始めたんですけどー。死んだ人が来るところです!」

「……、え」

話が脱線しかけたのに、いきなり確信。
なのに、あんまりにも現実味が湧かなくて、確信を懐疑心でもみ消してしまう。

「死んだ……人が?し、死んだら、死ぬんじゃないの……?」

「ええ、死んだら死にます。で?その後は?お嬢さん、死人さんの知り合いいるんですかー?」

「いないけど……。じゃあ、ここはあの世ってこと?」

昔から語り継がれている、死んだ人が行き着く先。花畑や雲の上とか色んな描写で描かれているけど、ここはまるでーー

< 16 / 133 >

この作品をシェア

pagetop