死が二人を分かつとも
「お嬢さんが死人さんになったのは紛れもない事実です。ただ、しょーじき、お嬢さんが生前に悪いことしたと思えないんですよねー。酷いんすよ、ここに来た死人さんは!手前が困ってんだろうと思って、懇切丁寧に場所の説明してやんのに、信じなくて怒鳴り散らかしーので、手前に八つ当たりしたり!
死んだと分かっている奴なんか、また悪巧みしたいから、『他に人はいるのか、女は?』とかとか聞いて来る奴だったり!
そーです!お嬢さんが悪いことした訳がないです!きっと、なんかの間違いです!お嬢さんは天使です、天使!」
慰めようとし熱弁になるコウモリこそが、どうして地獄にいるんだろうと思う。
でも、それより気になったのはーー
「他にも、人がいるの?」
コウモリが言うところの『死人さん』。
地獄ーーあの世ならもっと死んだ人でいっぱいかと思ったのに。
「いますよ。けど、会わない方がいいっす!ーーって、ああ!まずい!」
何がと聞く前に、コウモリが私の袖口を噛む。
くいくい引っ張って、立てと言われているようだ。
「ふぁやく!ふぃげまふよ!」
袖をくわえたままで話されては聞き取れない。
とりあえず立ってみたけど、出る足をくすぶっていれば、コウモリは相変わらず急かす。
「叫んだり走ったり泣いたり!結構目立つことしてましたから、気付かれたに違いないです!言ったでしょ!?他の死人さんが、こぞって来るーーお嬢さんみたいなのを放っておかないって!」