死が二人を分かつとも
肩を上下し、息すらもままならないのに、“彼”は必死に叫んでみせる。
「どうしてだ!」
入り混じった悲痛は、私の心を痛める。
聞きたくないと耳を塞ぎながら、足を進めた。
行くなと言われる。
来ないでと拒絶した。
“彼”が進むならば、私の足も動く。
最初は激昂するかのように声を上げていた“彼”でも、徐々に落とされる声のトーンは私の冷静さを手招こうとしている。
「お前が何をしても俺の気持ちは変わらない。ーーだって、お前のこと愛しているから、今でも。それが、人を愛するってことだろ」
そんな、“彼”の想い。
会う度に言われ続け、その度に舞い上がった気持ちすらも、私は耳を塞ぐ。
耳を塞ぎながら、聞いてしまう。
こっちに来いと伸ばされた腕は、私を助けたい一心。
ーーずっと、そうだった。
“彼”はいつも、私を想ってくれていた。
私を一番に考えて、動き、手を差し伸べてくれる。
変わらないままの“彼”。
こんな時までも、“彼”の中は私のことしかないんだ。