死が二人を分かつとも
「昨日、告った子だ」
石でも投げつけられた気分になった。
悪い予想を立ててしまう。
昨日、弥代くんに告白し、フられた子。
その子が、私を呼ぶだなんてーー
「あなたが、掛川くんと付き合っているんですかっ」
血の気が引いていく。
ヒステリック気味に近づく彼女だけど、真奈が間に入ってくれた。
「待った。なに勘違いしてんのかなぁ」
「だって、昨日!掛川くんとその子が、一緒に帰って行くの見たって人がいるんです!『好きな子がいるから』って断ったその後に、その子と!」
真奈が、目配せする。
そうなの?と。
私が隠しておきたかった理由が目の前で広がっていく。
みんなを、傷つけてしまう。
私が絶世の美女とか、弥代くんと釣り合う女ならいいのに。彼と隣り合って立てば。
「なんで、あなたみたいなのが……!」
こう、なるーー
みんな、“納得出来ない”んだ。
だからこそ、傷ついて泣かせてしまう。
私だって、何で、彼の好きを貰えたのか分からない。でも、現実はこれ。
弥代くんが恋したのは、私。
みんなが『なんで』と言ってしまうような、凡人なんだ。
「やしーー掛川くんとは、住んでいるとこが近いから。昨日、遅かったし、掛川くん、やさしい、から」
泣きそうな声を呑み込み、嘘を吐く。
たどたどしくても、聞き取れたことに真奈は頷いた。
「そーゆーことだからぁ。フられて傷心なのは分かるけど、八つ当たりしないでよ」
「ごめん、なさい……」
涙をこぼしながらも、ふらふらと教室から出ようとする彼女。彼女の友人が何人か駆けつけて、慰めるようにその肩を抱いていた。