死が二人を分かつとも
二章
(一)
現実と夢は、目覚めた時にその違いを知る。
体の感覚、空気と混じった世界の匂い、肌本来が持つ温もり。
耳に入ってきた音が目覚まし代わり。
雨音で起きるなんて、心地いい目覚めになった。
「起きたか?」
彼ーー弥代くんが、私の顔を覗き込む。
頷けば、まだ眠いと気取られたらしく、もっと寝とけと笑われた。
胸が痛くなるほどに熱くなる。大好きな恋人の笑顔って、見ているだけで幸せな気分にしてくれるんだなぁ。
しばらく、互いを見続けーーふと、気づく。寝ている私は仰向け、弥代くんは顔を俯けている。
真っ直ぐ上を見れば、彼の顔。
そうして、頭越しに伝わる固い枕の感触は。
「ご、ごめんっ」
私を飛び起こさせるには十分な膝枕だった。
「頭、重くなかった!?」
言いながら、何を言ってんだかと、恥ずかしくなってくる。
ひたすらにごめんと繰り返し、弥代くんがかけてくれたであろうブレザーを返した。
「重くないって。何なら、マットレス代わりでもしてやるのに」
冗談を交えながら、受け取ったブレザーを着る彼。その脇に、斧があったことで、血の気が引く思いとなった。
「夢、じゃないんだよね……」
灰色の土に、暗雲の世界。
地獄と呼ばれるここだけど、今は雨が降っていた。
「外に出ない方がいい。この雨、ヤバいんだと」
そんな私たちがいるのは、“中”。
ただし、屋根もなく扉もない、冷たい岩で囲われた洞穴のようだった。
広くもなく狭くもない、口の中のような穴の中は、眠る前には見ていない。弥代くんが、ここまで運んでくれたのか。