死が二人を分かつとも
「でも、弥代くんのことは、きちんと思い出したいよ」
胸元の指輪を取る。
弥代くんがくれたもので。
「二人っきりの時は指にするって約束だったよね」
薬指にはめてみせた。
ここまでの私の行動を呆然としていた彼だけど、そっかそうだなと左手を見せてきた。
「本当は、二人っきりの時じゃなくても、周りに見せびらかしたかった。俺とお前は付き合っているって」
既につけられていた指輪。
男性に指輪は少し違和感あるけど、結婚指輪(相手がいる)ならおかしくはない。
「私が、秘密にしたかったから」
「そよ香のワガママは、可愛いってことで許される」
気にするな、と左手を取られた。
「はい、はい!手前、これ知ってます!結婚式ですものね!」
「地獄にも結婚する奴いるのか?」
「いえー、なんか、男が指輪持って、木を相手に結婚式の誓いってのをしてました。ありゃあ、結婚する直前に死んだんでしょうねー。ショックで頭パーになって、一人で三役してましたよ。新郎新婦に、立会人。ともかく、ええと、愛する者たちがやることですよね?」
「ああ、そうだな。結婚式には立会人が必要だよな?」
「うん。牧師さんとかだと思うけど、もしかして、ここで?」
「やりましょう!」
三者ともに疑問符を飛ばし、一回りして結果に繋がる。
ムードも何も、こんな場所じゃ望めないけど、この地獄に綺麗な場所はないだろう。