死が二人を分かつとも
「え……」
赤の暗転。
唐突なる景色の変化に、まばたきを忘れる。
やけに、空が近い場所だった。
晴天のはずが、水分を含んだ空気のおかげで涼しげに思える。
「どこ……?」
“身に覚えない場所”、のはずなんだ。
「いた……っ」
そうでなければならないと、夢の中で痛覚が訴えてくる。
何もないコンクリの足場。つま先より向こう側には、奈落があった。
足が竦む。安全地帯に行こうとするも気持ちだけ。足が動かなかった。
逆にーー
「い、いや……」
前に進もうとしている。
前なんか、ないのに。
「なん、で」
裏腹に働く心境。反面する行動。
『早く行け』と急かされている。
早く行け、でないとーー