死が二人を分かつとも

『大丈夫だ。そよ香には、俺がついているから』

「あ……」

ノイズの映像に、声だけが再生された。

大丈夫。大丈夫。低い声で言われたそれは、自然と私の気持ちを落ち着かせる。


言霊みたいだ。その人が口にすれば、必ずそうだと思えてしまう。

「大丈夫」

だから、進んでみよう。

木々に手を置きながら、歩く。

不安は拭えないから、相変わらず後ろを振り向いちゃうけど、十歩から二十歩以上まで平気にはなった。

何もないことへの慣れもあるかのしれないけど、新たに頭でリフレインする“彼”の言葉に励まされているおかげだ。

進む度に、思い出す度に。一つ一つがきっかけとなり、次の言葉を紡いでくれる。

『大丈夫、俺がいる』『俺が守る』『不安にならなくてもいい』『だって俺はーー』


「いたっ」

小さく呻く。とっさに押さえたのは頭。
怪我をした訳じゃない。また目覚めた時みたいな頭痛がした。

< 8 / 133 >

この作品をシェア

pagetop