死が二人を分かつとも
今更、言えるわけがないんだ。
隠したからには、最後まで隠し通さなきゃならないんだから。
「そよそよもぉ、掛川くんと付き合えたら、あたしに言ってね?」
「も、もちろんだよ!ーーって、そもそも、私が掛川くんと付き合える訳がないよっ。私、真奈みたいに可愛くないし、わ、私なんかぜんぜん!」
無理無理と手を振っていれば、クラスの誰かがペンケースを落とした。
落としたなら拾えばいいのに、文房具は転がったままだった。
私の足元にまでペンが一本転がってきた。拾おうとしーー
「うん。そよそよは、あんまり可愛くないよねぇ」
出来なかった。
にこにこした顔に不釣り合いな事を言う真奈が、いたから。
「メイクもしない、髪もいじらない。私服だって平凡でぇ、自分から話題ふらなくてぇ、いっつも頷いて聞いてるよーな根暗ちゃんだよねぇ」
「真奈もさー、よくそよ香ちゃんと付き合って来たよねん」
「えー、そりゃあもう、『親友』だから。親友だから、相手の欠点とかそんなのもひっくるめて、ぜーんぶ好きだったもの。一緒にいるだけで、めちゃくちゃ楽しい。そよそよに色んなこと話したいって、『親友』だから思えたけどぉ。親友じゃないと思ったら、もー、うざい根暗としか思えなくなった」
真奈の豹変ぶりには、どうしたのとしか言いようがない。こんなの、真奈じゃない。真奈は中学の時からの『親友』で。
「親友だと思っていたあたしを裏切ったのは、そっちでしょ!」
弾けた金切り声が、クラスに響き渡った。
泣きそうなほどこちらを睨み付ける真奈に、軽蔑する瞳の由紀。クラス全員がそんな目になり、ーーみんな、その目で私を見ている。
いきなりのことで、事態が把握出来ない。
説明する人はいないのに、私がみんなの悪者になっていることだけは分かってしまう。
混乱していれば、私のスマフォが鳴った。
今はそれどころじゃないのに、真奈が「見なよ」と指示する。
「で、でも」
「いいから、見なって!」
机を叩かれた。
溜めた涙を零す真奈に、由紀を始め、クラス全員の女子が慰めに入っていた。
私を、目の敵にしながらーー
私だって泣く真奈を慰めたいのに、彼女たちの間に見えない壁があるようで近づけない。
何もやらない訳にはいかず、スマフォを見れば、LINEに画像が添付されていた。