死が二人を分かつとも
「最低なのはどっちだ。寄ってたかって、そよ香に当たるなよ」
多数の非難より、たった一人の味方の方が安心してしまうほど、彼の存在は大きかった。
「文句あるなら、一対一でやれ。責めるだけ責めて、相手の弁明無視か?そよ香が、誰かを馬鹿にする性格じゃないって分かっているくせに、こんな写真回して味方を大勢つけて、そよ香を知らない奴からはやし立てられ、その気になってさ。『親友』を徹底的に追い詰めて、何が楽しいんだ」
人だかりが、彼に道を作るように避けていく。彼の姿に、誰も目を合わせなかった。
「周りが言っていたからあいつが悪いって、そよ香のこと何にも知らない奴が陰口叩くなよ。目、見えないわけないよな?口、糸で縫ってあるわけないよな?頭、考える程度には働くよな?
なら、今お前らがしていることを“自覚”しろ。一人の人間を、大勢で責め立てて優越感に浸っているのは、どっちだ?」
「弥代、くん……」
私の前まで来た彼は、辺りを嫌悪するように一瞥し。
「俺は、知っている。隠し事があることに罪悪感持って泣いていたそよ香を見ていたし、周りを傷つけたくないって話していたそよ香の言葉も聞いた。そんなそよ香が、優越感浸りたいからって親友に黙っていたんじゃないことも、少し考えれば分かる。お前、すっごい優しいもんな」
笑顔で、私の手を取ってくれた。
行こうと、引かれる。
真奈の泣き声に後ろ髪引かれる思いとなったけど。
「あいつらは、敵だ。俺だけを見ていればいい」
足は止まらない。
彼の言ったこともそうだけど、見えないところで『最低女』の声を耳にしてしまったから。
もう、私を好きでいてくれる人は後ろにいないんだーー