死が二人を分かつとも

「もう、何なんだか」

記憶がないのも深刻な病気だけど、こうも頭痛があるのは絶対他の病気もありそうだ。 

少しずつ思い出せているなら、一過性の記憶障害なんだろうけどーーじゃないと困る。

せめて、誰か私を知っている人がいればいいのに。

無意識に胸元に置いた手。私の癖なのかもしれない。不安になると、置いてしまう。


その時に触れた指輪をまた眺めた。
綺麗な宝石。日の光にかざせばより栄えるのに、空は星一つない。

今にも雷が鳴りそう。
雨の前に鳴る雷雲は、やけに厚くて暗い印象がある。

あの突発的な大音量に心の準備をしたところで無意味だろう。せめて、鳴らないことを祈るしかない。もしくは耳に詰め物をするか。

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